デュピクセント(デュピルマブ)

デュピクセント(デュピルマブ)について

デュピクセントはアトピー性皮膚炎の皮疹やかゆみの原因をブロックする効果のある注射薬です。

今までの治療で十分な効果が得られなかった中等症以上のアトピー性皮膚炎の患者さんに対して、高い改善効果と安全性を示しており、これまでにない優れたアトピー性皮膚炎治療薬であると考えられます。

2018年から15歳以上の患者様において臨床での使用が可能とされていたのですが、2023年9月25日から新しく適応が拡大し、6か月以上の小児での使用が認められる事となりました。

作用機序について

アトピー性皮膚炎では、IL(インターロイキン)-4やIL-13という炎症物質が病態に重要な役割を果たすことがわかっています。
デュピクセントはIL-4受容体とIL-13受容体を構成するIL-4受容体αサブユニット(IL-4Rα)に結合するヒトIgG4モノクローナル抗体で、IL-4とIL-13の作用を直接抑えることで炎症を抑制する事が出来ます。

適応患者さんについて

前提として、デュピクセント投与可否の判定は全身の皮膚症状スコアの算出が必要です。

アトピー性皮膚炎

  • 成人
  • ステロイド外用薬・プロトピック軟膏などの抗炎症外用薬を一定期間投与しても十分な効果が得られない方
  • 生後6ヵ月以上の小児
    デュピクセントは2023年9月25日、生後6ヵ月以上の小児のアトピー性皮膚炎の適応が承認されました。日本で初めて生後6ヶ月から全年齢のアトピー性皮膚炎に適応を有する生物学的製剤となります。

結節性痒疹

  • 成人
  • ステロイド外用剤等による治療を施行しても、痒疹結節を主体とする病変が多発し、それが複数の部位に及んでいる方

慢性蕁麻疹

  • 成人
  • 12歳以上の小児
  • 抗ヒスタミン薬を一定期間投与しても十分な効果が得られない方

副作用について

主な症状として、過敏症反応が現れることがあります。下記の症状がみられたら、投与を中止し次の診察日を待たずに速やかに主治医に相談してください。

過敏症反応

ふらつき感、息苦しさ、心拍数の上昇、めまい、嘔気、嘔吐、皮膚のかゆみや赤み、関節痛、発熱、、血管性浮、 など

その他、以下の副作用が現れることがあります。症状が現れた場合には、速やかに主治医または看護師、薬剤師にお伝えください。

注射部位反応

デュピクセント®を注射した部位に、発疹や腫れ、かゆみなどの症状がみられる場合があります。

ヘルペス感染

デュピクセントには免疫を抑える働きがあるため、口周りや唇に発疹などがみられる場合があります。

結膜炎

目やまぶたの炎症症状(赤み、腫れ、かゆみ、乾燥など)がみられる場合があります。これは、デュピクセントがIL(インターロイキン)-4という炎症物質の作用を直接抑えていることに関係しています。IL-4は目の粘液を出すのに関わっているため、目が乾燥しやすくなり結膜炎やドライアイを認める事があります。

投与スケジュールについて

デュピクセントの用法用量は、適応疾患・年齢・体重によって異なります。

成人(15歳以上)

投与開始日1回目のみ、2本を皮下注射(指導のもと、看護師と注射)します。
2回目からは2週間に1回、1本を皮下注射(看護師見守りのもと、基本的にご本人が自己注射)します。
継続して治療を行う場合、3回目以降からはご希望によりご来院、ご自宅での自己注射をお選びいただけます。

小児(生後6か月以上15歳未満)

生後6カ月以上の小児には、体重に応じて決められた用法及び用量で皮下投与します。
デュピクセントには、画像のようなシリンジタイプもございます。用法や注射器のタイプは、お子さまの体重やご家族への指導状況によって選択します。

自己注射について

デュピクセント(デュピルマブ)は自己注射が認められていますので、指導を受けた患者さま及びそのご家族様は、ご自身での注射が可能となります。
通院にともなう時間的な制約や負担を軽減できることや、高額療養費制度で自己負担額を減額できること(※所得によります)から最終的に自宅での自己注射をご選択される患者様がほとんどです。
指導の進捗状況やご本人及びご家族様のご不安状況を考慮し、ご希望の方は院内での注射の継続も可能です。

患者負担・薬価について

デュピクセントの薬価は、ペンタイプで53,659円/本・シリンジタイプで53,493円/本です。(2024.11月現在)
3割負担の患者様でペンタイプで16,098円/本・シリンジタイプで16,048円/本の薬剤費となります。
いずれの注射器においても2本必要なため、初回は、ペンタイプで32,196円/本・シリンジタイプで32,096円/本の薬剤費となります。

デュピクセント導入には薬剤費に加え検査費用(採血)などがかかります。
また、自己注射に移行した後は、クリニックでのお会計は5千円ほどになります。なお、お薬は薬局での処方になりますので、お薬代は薬局での支払い(デュピクセント1本あたり1.8万円弱+薬局での処方料)となります。その他の検査代・指導料などを全て含んだクリニック・薬局でのお支払いを合計すると年間で50万円超(3割負担の場合)となります。

よくあるご質問

費用が高額のため治療を続けられるか心配です。

患者さまの経済的な負担を軽減するため、さまざまな医療費の助成制度があります。
例えば、1ヵ月(その月の1日~末日)の間に医療機関の窓口で支払うべき額(自己負担額)が、一定の金額を超えることになった場合、自己負担額を一定額(自己負担上限額)にまでおさえることができる制度、高額療養費制度等です。詳しくは加入している保険者などにご確認ください。

途中で注射をやめることはできるのでしょうか?

デュピクセントは、投与開始後16週間(約4か月)で効果判定をいたします。多くの方は1~2回の注射で痒みや皮膚症状の改善を感じます。
効果が認められた場合約一年は継続します。中止をご希望の場合、慎重にご判断いただくようおすすめしています。

軽症のアトピーに使用できないのはなぜですか?

厚生労働省のデュピクセント最適使用推進ガイドラインにより定められているためです。

デュピクセントを投与していてもワクチンを接種して問題がないですか?

新型コロナウイルスワクチン
NIH(米国国立衛生研究所)および DHHS (米国保健社会福祉省)におけるワクチンの分類にて、新型コロナウイルスワクチンは非生ワクチンとして分類されているため接種可能です。

生ワクチン(麻疹風疹ワクチン、水ぼうそうワクチン等)
安心して治療いただくために生ワクチン接種前は12週間、接種後4週間デュピクセントの投与を空けますので予防接種スケジュールもご確認ください。