アトピー性皮膚炎とは
半年以上、慢性的にかゆみを伴う湿疹を繰り返す病態で、多くはアレルギー素因に基づきます。多くは乳児期に発症しますが、最近は小児期から成人期に初発する患者も増加しています。
アレルギー素因とは2つの要素があり、ひとつは本人や家族が気管支喘息やアレルギー性鼻炎、結膜炎やアトピー性皮膚炎のうちいずれまたは複数のアレルギー性の病気を持っていることがあげられます。もうひとつがIgE抗体をつくりやすい体質であることです。皮膚炎の状態が軽い場合には総IgE値は低い値になることが多いとされています。
皮膚炎が悪くなるきっかけは積極的に治療ができていないことがほとんどです。しかし職場や日常生活の環境が関与することもあります。ダニやホコリ、動物の毛、そのほかのアレルゲン(アレルギー症状の原因物質)や温度や湿度、飲酒や感冒、精神的なストレスも皮膚炎の状態に影響します。
治療
日本アレルギー学会・日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021」アレルギー2021;70:1257-1342
頻回に再燃をくり返す場合には、症状改善時に治療を中止し、再燃するごとに治療を再開する(リアクティブ療法)のではなく、プロアクティブ療法を行います。まずは寛解(症状が落ち着いて安定した状態)を目指した治療を行い、保湿剤によるスキンケアを行いながら、少ない頻度で抗炎症外用薬を用い寛解状態を維持する治療法がプロアクティブ療法です。
プロアクティブ療法で、抗炎症外用薬を最小限に使用し、最大の効果を得るためには、悪化因子の対策を継続することが大切です。
まずはプロペトやヘパリン類似物質などによる保湿が重要です。毎日保湿をすることが予防にもつながります。強い皮膚症状に対する第一選択はステロイド外用です。症状の程度や部位に応じて適応や強さを調節して処方させていただきます。その他、以下の外用薬も有効です。
細胞内の信号を伝達するカルシニューリン(酵素)を抑えるはたらきがあります。有効成分の粒がステロイドの塗り薬と比べて大きいため、健康な皮膚への影響は少ないのが特徴です。
・ヤヌスキナーゼ(JAK)外用剤【コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)】
JAK(ジャック)阻害剤は細胞内の免疫活性化シグナル伝達に重要な役割を果たすヤヌスキナーゼ(JAK)に対する阻害作用を示し、免疫反応の過剰な活性化を抑制することでアトピー性皮膚炎を改善する薬剤です。
PDE4(ピーディーイーフォー)は身体の中の細胞に存在する酵素(タンパク質)で、炎症を抑えるシグナルを分解し、炎症を抑える働きがあります。
タピナロフが炎症反応を促進する生体内物質の産生を抑制することで皮膚症状を改善する働きをもたらします。
強い炎症を伴う湿疹が広範囲に生じている16歳以上の患者さんで使用されます。最大3カ月まで続けることができますが、そこでいったん休薬する必要があります。また服用中は、血圧が上昇したり腎臓の機能が低下することがあるので注意が必要です。
・ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬【リンヴォック・オルミエント】
関節リウマチの治療で先行して使用されていましたが、2020年〜2021年にかけてアトピー性皮膚炎への適応が追加されました。服用により、単純ヘルペスウイルス感染症になったりニキビができることもあります。
当院では全身型紫外線治療器及び局所型を導入しております。週2回ほど継続して治療をすると効果が見られます。
生物学的製剤とはバイオテクノロジー技術によって生み出された医薬品で、生物が合成する物質(たんぱく質)を応用して作られた薬のことを言います。注射や点滴で投与します。
紫外線療法
ナローバンドUVB療法
ナローバンドUVB療法とは、乾癬、白斑、掌蹠膿疱症・アトピー性皮膚炎円形脱毛症などの治りにくい皮膚疾患に対して有効な最新の光線療法です。
これは中波長紫外線(UVB)のうちで治療効果の高い有効な波長域だけを照射する治療方法です。
1970年に設立された米国ボストンのレーザー会社を発祥とするシネロン・キャンデラ社のダブリン7シリーズ三面鏡型紫外線治療器を採用しています。
立ったままで体の全面、後面を照射することができるため、短時間で全身の治療を行うことが可能です。
地上に届く太陽光の中には、紫外線、可視光線、赤外線があり、さらに紫外線はUVA、UVB、UVCの3種類に分けられます。
ナローバンドUVB療法は、紫外線の1種であるUVBの中でも、皮膚疾患に効果が認められている311~313nm(ナノメートル)という幅の狭い波長(ナローバンド)のみを照射することができる光線療法です。
エキシマライト
局所に症状がある尋常性白斑、円形脱毛症、掌蹠膿疱症、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬などに適応があります。
ピンポイントで照射できる装置のため、健常部位への紫外線照射を防ぐことができます。紫外線が照射されるスポットサイズをより小さくすることができるため、症状にあわせて細かく照射することが可能です。
副作用
徐々に照射時間を延長するため、激しいやけどは生じません。
個人差があります。
治療回数が増えると、皮膚腫瘍(がん)の発生につながる可能性があります。これまでの研究報告から非常に少ないと考えてよいですが、全くないわけではありませんので、治療前に医師からご説明いたします。
治療が受けられない方
- 日光過敏症(紫外線を含む、日光に対して過敏症がある方)
- 膠原病があり、日光によって増悪する可能性がある方
- 皮膚の悪性腫瘍(がん)や前がん状態(皮膚がんの一歩手前、日光角化症など)がある方
- 免疫抑制効果のある特定の内服薬や外用剤を使用している方
治療概要
治療時間 | 治療範囲にもよりますが、照射自体の時間は約2~15分程度です。 |
治療回数 | 疾患や症状によって異なりますが、10回前後で効果が出てきます。 |
治療間隔 | 週に1~2回が推奨されますが、症状改善後は治療間隔を延ばしていくことも期待できます。 |